プロローグ

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ドアがあるだけの部屋。 女は気が付くとそこに居た。 ここが何処なのかは分からない。 しかし、言葉では言い表せない とてつもない恍惚感に包まれている。 もしも天国があるとしたら ここがそうなのかもしれない。 こんな6畳ほどの小さな空間が。 ドアが開く。 部屋に入ってきたのは運転手の男だ。 「《エル》の部屋はどうだい?」 優しい笑顔で男が言う。 「なんでこんな何もない部屋に居るだけなのに、こんなにも幸せな気持ちになるんだろ。」 女はあぐらをかき、目を瞑り合掌した。 そんな女に男が隣に寄り添う。 「生きていると本当にクソみたいな事ばかりだ。でも、《エル》を知ってから考えが変わった。どんなに苦しい事があってもこの部屋に来れば忘れることが出来る。《エル》は神のドラッグなんだ。」 「こんな神なドラッグどこで手に入れたの?」 「とあるクラブで変な奴から貰ったんだ。しかも、タダで。そいつは確か…」 「確か?」 「神様のお友達って言ってたよ。」 「なにそれ!」 女は手を叩き、笑うと、ふと… 「これ、クラブで貰ったんでしょ?セックス・ドラッグじゃないの?」 「こんな感覚でセックスなんてしたらどんなキメセクよりもヤバいかもな。」 男と女は目を合わせるとお互いを強く抱きしめ合った。
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