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剛田という男
「人気のない路地に不審な車が止まっている。」
そんな通報を受けて駆けつけた警官たちは黒いミニバンの後部座席に座る男女を見つける。
外からの呼び掛けに反応しない二人に業を煮やした警官は車のドアを開けると男の身体を揺すった。
男に反応は無くそのままドアから外へ崩れ落ちた。
「し、死んでるぞ!救急と応援を呼べ!」
しばらくすると救急隊とパトカーがやってきた。
救急隊はもう手遅れであるのは分かっていたがミニバンの男女には形式的に処置を施すことにした。
目立った外傷も争った形跡もなく事件性も感じられず、おそらく心中だろうというのが制服警官たちの意見だ。
しかし、スーツ姿のガタイの良い男、薬物銃器対策課の剛田の意見は違った。
「これはクスリだな。オーバードーズだよ。ほら。」
剛田は運転手の男のポケットからラムネのような錠剤を取り出し、周りの警官たちに笑って見せびらかした。
そして男がもうひとつ持っていたコカインが入ったパケ袋は周りに知られることなく自分のスーツの内ポケットにしまうのであった。
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