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剛田は久しぶりに自宅へ帰っていた。
3LDKのマンションは独り身の男には広すぎる。元妻は家財道具を置いて逃げるように出ていった為、そのままだ。
帰る度に虚しさを覚える剛田は自分と娘が唯一写った写真を手に取るとそれを見つめたままソファに深く体重を預けた。
ふと、スーツの内ポケットにあったコカイン入りのパケ袋を思い出す。
中身の白い粉をガラステーブルに出すと、その辺にあった何処かの会員カードを拾い、それで白い粉を丁寧に刻んだ。
そして白い粉で出来たラインを1000円札を丸めて作ったストローで鼻から一気に吸い込む。
ソファに腰掛けたままだが、頭の中では身体が浮き、まるで宇宙空間を楽しく浮遊している気分だった。
剛田は妻と娘を失ってしばらくすると押収した薬物に手を出すようになった。独りになった虚しさを紛らわせる為だ。
薬物を専門とする刑事が自ら薬物の虜になってしまった。そんな自分を恥つつ、剛田はもう一度コカインを吸引するのであった。
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