願いごと:僕は、〇〇人になりたい

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「あ、神社」  新しい道を歩くのが好き。いつもの街なのに、新鮮な発見があるから。  今日も路地を伝って、学校までの道を行く。玄関先にかわいい置物があったり、猫がのんびり寝ていたり。ちちち、と舌を鳴らして猫の気を引いていると、あの、何か御用ですか? と目いっぱい不審げな顔をされることもあるけれど…。  小さな祠や神社、お寺に行き当たることもしばしばだ。  個人の家に祭られているのはまずいけど、そうじゃないものは、見かけたら必ずお祈りすることにしている。この国の神様はとても寛大で、何ヵ所でお祈りしてもOKらしいから。         ***  この国に来てまず驚いたのが、コンビニの多さだった(数メートル歩くと、また同じチェーン店がある。よく潰れないなあと思う。本当に不思議)。だけど、それよりも神社のほうが俄然多いんだそうだ。みんな、信心深いのかな。そう思って、ある日、クラスメイトのみんなに聞いてみた。 「どの宗教の人が多いのかな? 皆さんは?」  そしたら、口々に、別に、特にこれといってない、信じてない、と言われてまたびっくりした。それなのに、コンビニよりたくさん、お祈りの対象があるの?  じゃあ、お祈りとかしない? と聞くと、たまにする、気が向いたときに、あとお正月? って。気が向いたときに。信じられない、だって、相手は神様だよ? 「まあ、宗教のクロスオーバー、半端ないからね」 「そうそう。生まれたときや成長を祝うときは神社にお参り、結婚式は教会で、で、死んだらお寺でお葬式(笑)」 「お正月に神社やお寺に行って、ハロウィンで騒いでクリスマスを祝って(笑)」 「うーん…」  自分も、正直そう信心深いほうじゃない。けど、世界のかなりの人は、唯一神を信仰していると思う。そういう人たちに、この状況はどう映るかな? そもそも―。 「神様同士、喧嘩しないですかな?」  これが一番気になった。 「さあ? しないんじゃない?」 「昔から、“八百万(やおよろず)の神”を信仰してきたからね」 「外国から来た新しい宗教の神様すら、たくさんの神様のワンオブゼムにしちゃう大雑把さ、いや、おおらかさ?(笑)」  いつも御守りをたくさん付けているみやこさんに訊いてみたら、この国の神様はみんな心が広いから、喧嘩なんてしないって言っていた。喧嘩しないで、お互いに助け合ってその人を守るから、たくさん御守りがあってもいい、むしろ、たくさんあるほうがいいと私は思う、だって。ほんと、寛容な神様たちだね。  じゃあ、そのたくさんの神様のうちの1人(じゃなかった、1(はしら)だね、みやこさんが教えてくれた)くらい、僕の願いを叶えてくれる神様がいるかも? そんなことを期待して、僕はお祈りを始めたんだ。
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