心臓に毛の生えた男

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心臓に毛の生えた男

中学から仲良くしている志穂とは一緒に暮らし始めてから二年が経つ。 当時同居していた恋人と別れ彼が家を出たことで、空きがあるからおいでと志穂に言われたのだけど、私もちょうど同時期、勤めていた会社を辞め途方に暮れていたから志穂の言葉は正直ありがたかった。 なんてったって東京の一人暮らしはお金がかかる。 志穂とは気の知れた仲だったから同居生活は私にとっては楽しく、家賃や生活費も浮くのだから、なかなか充実した日々だった。 それでもちょっとストレスを覚えたのは、約一年前。 志穂に新しい彼氏ができた頃。 その彼、大岸(みつる)君が家にちょくちょく、というかもはや同居している勢いで家に来るようになったのだ。   例え友達の彼氏とはいえ家に異性がいるのは気が抜けなくて、少し神経質気味な私はだらしない友達だと思われたくなくて家の掃除を徹底的にし、休日でも薄化粧をし、料理にも力を入れた。 冷静になって考えると家が汚かろうが料理が不味かろうが私がすっぴんだろうが、それで大岸君が落胆したとしても私にはなんのダメージもないのだけど。   それでも家事が大の苦手な志穂は絶対しないし、二人して怠けているとか思われるのは癇に障るからどうしたってやってしまう。 お陰でこの一年で家事レベルは劇的に上がった。 最近になってようやく大岸君の存在にも慣れてきたし、私の充実ライフは元に戻りつつある。
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