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最終話
ある日の夜。
お風呂から上がって居間に行ってみると、陽一さんが縁側に座っていた。
何をしてるのか気になって近寄ってみたら、何枚かの紙を眺めている様子。
「何を見ているんですか?」
訊きながら隣に座る。
「ん?ああ、熱湯先生の次回作の企画案」
「次回作出るんですか?」
「企画が決まったらな」
「そうなんですねぇ。こないだの新作も素晴らしかったので、次回作も気になります」
「そういや新作の感想聞いてなかったな。どうだった?」
「感動しました」
熱湯やかん先生の新作『白菜伯爵と孤独のトマト姫』は農園を舞台にしたちょっぴり切ないラブロマンスとミステリーを混合させたお話で、誰が農園を荒らしたのかという謎解きに頭を捻らせ、白菜伯爵とトマト姫の悲恋に涙しそうになったりした。
読んでいたときの気持ちと全体的な感想を伝えれば、陽一さんは満足げに頷く。
「熱湯先生が読者に伝えたい内容がちゃんと伝わってるみたいで嬉しいよ」
「編集者の陽一さんの頑張りがあったからこその大作ですよ」
「嬉しいこと言ってくれちゃって。それで笑顔だったらもっとグッときてたよ」
笑顔のつもりだったんだけどなぁ。
最近、表情筋を鍛えようと書店で見つけた『笑顔美人になろう!』という本を購入し参考にしてるのに、改善してるのかしてないのか。
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