貪欲

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「みなみ」 「もうどうしたらいいかわかんないです。胸の片方でも見せればいいんですか」 「かっ!?かたっ」 いや、み、見たい!めっちゃ見たい!!ってそうじゃなくて!!! 「そんなことはできませんよ。陽一さんのことは大好きだけど、慣れないことを無理にやって、好きだからって自分を安売りして、それでどうにかなったってなんか悲しいですっ」 語調を強めたのも初めて聞いたが、目に涙を浮かべたのを見たら刮目する。 親友の披露宴ですら泣かなかったみなみが、泣いている!? 「頑張っても陽一さんにまだまだって言われるなら、この恋は全然私に見方してないんですよっ。もう、諦めるべきなんですっ。私と陽一さんじゃ、合わないってことなんですよっ」 「みなみっ」 「もうやめますっ!」 頬に涙が落ちた途端、みなみは走り出した。     「みなみ!」 このままではいけないとすぐに悟って俺も彼女を追いかけたが、まるで鹿のように階段をかけ上がるみなみに追い付くことができなかった。 施錠音のしたドアを何度も叩き名前を呼ぶが返事はない。 「みなみ、開けてくれ。話を聞いてくれ」 ドアを開けてくれる様子がなくて焦燥感に駆られる。 「みなみ!俺もみなみが好きだ!ずっと前から好きだったんだよ!」 こんな雑に気持ちを伝えるつもりではなかったけど、みなみを失うような焦りに襲われ冷静になれない。 「みなみ!信じてくれ!本当にみなみのこと、惚れてるんだよ!」 「しっんじられなぁい、しんじられないっ!そっんな言葉で、騙せると思っていーるのバカなの?」 歌うようなノリを怪訝に思う余裕すらない。 「みなみっ!俺が悪かったあーっ!!」 結局みなみは部屋を開けてくれず、俺は後悔の大波に揉まれながら自分の部屋に戻った。
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