貪欲

6/6

1070人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
盛大なため息を吐き出し両手に顔を埋めた。 「陽一さんのこともちょっと気の毒に思いますけど、でもみなみの方が辛いんですからね」 「わかってるよ、志穂ちゃん...」 「みなみ、私に相談してたんですから。陽一さんが全然靡かないのは私の愛の技量が足りないんだって」 「愛の技量ってなにwwwwww」と肩を震わす充を肘で小突きつつ、志穂ちゃんは言葉を続ける。 「私、みなみに遊ばれてるんじゃないのって言ったんです。なのに、そんなことする人じゃないって」 「みなみが...」 「陽一さん、何がなんでも謝ってくださいよ。じゃないと私あの家の畳むしりに行きますから!」 眉間にシワを寄せる志穂ちゃんに狼狽するが、「わかってるよ」と返事をした。 俺だってみなみに謝りたいんだから。 「問題はどう謝るかっすよねー。会えないとなると...」 「ご飯が用意してあるってことは、陽一さんが家にいない間に作りに来てるってことですよね」 「じゃあそこを見計らって謝ればいいじゃないですか」 「けど仕事が」 「有給とればいいじゃないですか」 「その手があったか!!」 冷静になればすぐに思い付いただろうに、そんなことすら考えられない程俺は余裕がなくなってるんだろう。 「それか置き手紙を残すとか」 「その手もあったか!!」 「...陽一さんこの五日間何考えてたんですか...?」 「...今日は帰ってくるだろうってただただ待ってたんだよ」 とりあえず、充と志穂ちゃんに相談して良かった。 「二人ともありがとな。そろそろ帰るよ」 「あ、クッキー大量に余ってるんですけど、持って帰ってもいいですよ」 「いらない」
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1070人が本棚に入れています
本棚に追加