1070人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
鬼ごっこ
あんなことがあった手前、陽一さんと顔を合わせるとか無理状態になってしまった私は、ここ数日漫画喫茶にお世話になっていた。
実家には行きにくいし、志穂の家も新婚生活を邪魔したくなくて行けないしで、お金もあまりない私は満喫を頼ったのだ。
ご飯を作るという条件付きであの家に住まわせて頂いているから、流石にそれは放棄できないと、陽一さんが会社に行ってる間にこそこそと用意し、ついでにシャワーと着替えもする日々。
満喫で過ごす夜は正直しんどい。身体的にも精神的にも。
個室は狭いしうるさいしで眠りにくいし、漫画を読めば何故か号泣してしまうし。
それもギャグ漫画なのに。
ギャグ漫画にあつかましいキャラが登場する度に陽一さんを思い出してポロポロと涙を流すのだ。
志穂の披露宴ですら涙を流さなかった鉄仮面のこの私が、毎夜ギャグ漫画で泣いているのだ。これはもう失恋の傷心を通り越して、精神状態の危ういラインまで来ているんだと思う。
けど、わかってる。
いつまでも逃げるわけにはいかない。
ちゃんと向き合って、もう一度ちゃんと気持ちを伝えて、ちゃんとフラれるべきなんだ。
じゃないと前に進めない。
わかっているのに、情けないけどやっぱり怖かった。
最初のコメントを投稿しよう!