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「え、言ったよ俺。でもみなみ、信じられない信じられないって言ってただろ?」
「言ってないですよ?」
「言ったって。ちょっと歌いながら。なんだっけな、しっんじられなーい信じられない、みたいな」
その下手な歌を聴いてハッと思い出した。
「もしかして部屋のドアを壊す勢いで叩いてた時に言ってたんですか?」
「そうそう」
「ああ...。あれはその......かくかくしかじかで」
「はあ?そんな歌聴いてたの!?俺が必死に謝ってた間ずっと!?」
「私も正常状態ではなくて、なんとか気を紛らしたかったんです。もとはと言えば陽一さんがいけないんですよ」
「いや、まあ、それはそうなんだけどさ...」
しんっと静まったかと思えば、陽一さんが吹き出した。
「歌詞が絶妙に合いすぎだろ。ある意味タイミング良すぎだって」と笑うから、私も確かにそうだなとツボにはまってしまい、二人で声を出して笑っていた。
「って、みなみが爆笑してるし!」
「だから、私だって笑うんですってば」
「いや、てかさ、最近のみなみ表情動くこと多くなったって。さっきも無理に座らせた時眉がつり上がってたし、今もこんな風に笑うし」
「そういえば、満喫で過ごした夜もよく泣いてました」
「泣いてたの!?」
「はい。陽一さんを思い出して」
すると目を見張り、頬に赤みがさす陽一さん。
「それはちょっと嬉しいけど、複雑だわ...。ごめんな、みなみ」
「いえ。もう謝らなくていいですよ。さっき土下座までしたんですから」
「人生で初めて土下座したよ...。でもそれくらい、いやそれ以上に、みなみには悪いことしたって自覚があったからさ...」
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