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エキストラ
俺は直輝の率直な問いかけに
言葉が見つからないでいた
奏は俺と唯香を見てどう思ったのだろうか?
直輝が言った言葉が全てなら
これは
どういう事になるんだろうか?
「先輩…奏ちゃん
マジで傷ついてますよ
泣いてました
俺、なんも言えなくて
家の前まで送って
そしたら
笑うんですよ…彼女
”もう大丈夫だから”って
俺、どんな気持ちで見てたか分かりますか?」直輝
俺は言葉につまる
「どうしたの?」幸助
幸助がヒョイヒョイ現れた
面倒そうな顔をする直輝
「おまえ、何だよ!
先輩だぞ!」幸助
直輝は目を逸らしながら
「何でもないですよ
別に…」直輝
ブツブツ独り言のように言う
「で、なにもめてんの?」幸助
直輝は俺の方を見て
「俺は言えません
聞きたかったら
愁さんに聞いてください」直輝
幸助は
口を尖らせて
「何だよおまえ
俺が知りたがりみたいに言うな!
で、愁
どした?」幸助
俺はしばらく黙っていたけど
幸助からは逃れられない雰囲気だったから
あの日の事
そして、奏がそれを見ていたことを…話した
「…で、おまえ何で愁のことを責めてんの?関係なくね?」幸助
直輝をけっこうしっかり見て幸助が言う
珍しく真顔の幸助
緊張感がはしる
「彼女…悩んでるから」直輝
「相談にのってんの?」幸助
「はい
一緒に目撃したので…」直輝
直輝はさっきまでの勢いがどんどんしぼんでいく
幸助が
真顔だから
「がやがやがやがやうるせー奴だな!お前さ
先輩の彼女だぞ
いい奴ぶって近付いて
隙あらば…みたいなセコイことすんな!
だからモテねーんだよ
お前はただのガヤなんだよ
二人にとっては!!」幸助
「おれ、奏ちゃんの事
マジで好きだから」直輝
「お前の思いなんか聞いてねーよ
おこぼれ待ってんじゃねーよ
誰がなんて言ったって
奏ちゃんは愁の彼女
今はお前はエキストラただの通りかかった人
あの子が仲良くしてるのは
彼氏の後輩だ
別れるまでは…立場わきまえろ
っで、別れたら行け」幸助
むちゃくちゃだけど
なんだかしっくり来る言葉に
俺たち二人は固まる
「えっ?響かない?お前ら聞いてんの?」幸助
脳みそ入ってるのかな?
幸助が直輝の肩をポンポンとたたき
「エキストラは主演をこれ以上責めるな!
悪者にしか見えないぞ」幸助
そう言って
自室へ戻っていった
あいつ
何なんだろうか?
ちょっとカッコいいこと言ったな
しばらく俺たちは考えて
黙り混む
「先輩、すみません
おれ、言い過ぎました
でも、知っててほしくて
奏ちゃんの悲しさとか…彼女
上手くなさそうだから
俺には話さなくて良いんで
ちゃんと話してあげてください
真実を…
そんで、決めるのは彼女だろうし
もし、落ち込んだら
おれ、その時に慰めにいきます
やっぱり好きなんで」直輝
直輝
少し泣いてる?
そんな風に見えたけど
あえて
見ない振りをした
直輝はそれ以上
なにも言わないで
自室へ戻っていった
食堂にひとり
残された俺は
しばらく冷静に
奏に言うことを
なるだけ誠実な言葉で言えることを
考えていた
純粋に諦めきれない直輝の気持ちにもこたえるためにも…
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