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何があったのか?
どのくらいかな・・・?
俺たちは無言で座っていた
「今日は・・・今日は少し変だね
俺たち
かえろっか?」愁
そう言わなければ
この状態が永遠に続きそうで
俺は苦しかった
「話し・・・何も終わってないのに」奏
俺は困った顔をしたんだと思う
奏では悲しそうな表情で少しそれを見て
目を逸らした
「・・・もういいの?これでいいの?」奏
「分からないよ
俺みたいな恋愛初心者には
よくかみ砕いて行ってくれなきゃ!!
俺、全く分からない
奏が今日
どうしてそんな風に話すのか?
俺になんて言ってほしいのか?」愁
けっこう強めに言ってしまった
すると奏は立ち上がって
深く深呼吸
「私なら嫌いになる
だって
好かれていることを知っておきながら
寂しいのが嫌だから
しっかり断ったりしないで
なんならたまに気持ちチラつかせたりして
逃がさないようにストックして
彼氏の事が好きだけど
進展がないし
そもそも会えないし
恋人であってそうでないし
だから
他の人で
他の人たちで・・・私の存在意義みたいなものを確認したりして」奏
俺は奏に対してはけっこう気長ではあったけど
やはりココまで話が込み入ると
理解不能で
イラついてきて・・・
「さっきから
何が言いたいの?
お前さ
全然わかんねーよ!!
別れ話ししてんの?
それとも
何かの言い訳?」愁
少し大きな声を出してしまった
奏では固まる
「ごめん・・・」愁
奏では背中を向ける
俺も奏の横に立って
「今日の奏はおかしいよ
俺もだけど・・・
今度
ちゃんと冷静に話をしよう
俺も言わなきゃいけない事ちゃんと言えてないし」愁
そう言うと
奏は俺の胸に抱き着いてきて
背中に手をまわした
俺の心臓は大きく高鳴った
「どうしたの?」愁
奏は何も言わないでしがみつく
「あの女の子が嫌なの
愁くんと一緒にいた
あの子が・・・
こんな風に悔しがる自分も嫌い
はじめてなの
こんな気持ち
苦しいの
どうしていても苦しくて
どうしていればいいか分からないの」奏
あの子がって
唯香のことを?
「あの…マネージャーのことなら
幼馴染だよ
友達
小さなころから知ってるから
・・・男とか女とか考えたことないよ」愁
奏では俺の背中をギュッと力ずよく握り
「じゃ愁くんはあの子が誰もいない部屋で寝てしまっても
ドキドキしない?
眠っているその子の
胸元が思った以上に開いていて
覗けば見えてしまうかもしれなくても覗かない?
抱き上げてベッドに移動させたときに
スカートがめくれて
だけど目を覚まさなくても太ももに触れてみようなんて思わない?
触れても起きないからって・・・覆いかぶさって
もっともっと触れてみたら・・・
触れてみたら起きてしまったからって
嫌だって言われて騒いだからって
押さえつけて
強引にキスしたり…」奏
どうしたんだ?
急にたとえがリアル
なんだか
この前
要くんとそんな事があったって言われているみたいで・・・
気持ちが悪い
「しないよ
友達だから・・・
さっきから
何の話してるの?」愁
奏ではポロポロ目から涙をこぼして
こちらを見る
俺は
俺は
どうしていいか分からなくて
俺の背中にしがみついている
奏の手をはぐように離して
少し離れて下を向く
「今日は帰るよ」愁
できる限りの明るい声で言う
奏ではヒクヒク泣きながら
「話が終わっていないのに?」奏
声を震わせながら言う
俺はそんな奏を見ながら
「これ以上話したら・・・いや
今日はやめておきたい
ごめん
冷静じゃない
俺たち
帰ろう」愁
そう言って
俺は奏の家に送ることにした
奏ではそれからずっと泣き通しで
会話は無く
こちらを見ることも無かった
俺は気になって
チラチラ見ていたけど
無理に会話をする気にはなれなかった
家の前に着いて
「大丈夫?そんな顔で帰ったら・・・心配されるよ」愁
そう言うと
やっと少し笑顔になって
「ありがとう
やっぱり優しいね」奏
そう言って
笑顔のまま小さく手を振って別れた
俺は寮までの間
全力で走った
呼吸が苦しくて
頭になんて酸素が行かないくらい
体を動かすことで
息をすることで
ただそれだけで一杯になるくらい
全力で走った
そうしなきゃ
考えてしまうから
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