シャワー

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シャワー

寮に着くと もう廊下の電気が付いているだけで 食堂は真っ暗だった もうそんな時間になったんだ・・・ 時計を見ると 21時を過ぎていた 静かに 静かに部屋へ戻ると 幸助は転がってゲームをしている 「おかえり」幸助 背中を向けたまま 俺は靴を差し出して 「ありがとう…靴」愁 幸助は起き上がってこちらを見て 靴を受け取り 「使用感・・・ハンパねーな どんだけダッシュしたの?」幸助 幸助がほほ笑む 「ごめん 今度、買って返すわ」愁 幸助はベッドの下の靴箱にそれをほおりこんで 「別にいいよ・・・新品を大事に履いてんのださいじゃん」幸助 そう言って がってゲームを始めた ごめん 幸助 それを言葉にするのは こんな時でさえむず痒いので 俺は心の中で小さく呟いた 俺はシャワーも浴びず 自分のベッドに上がった 「浴びないの?お前、汗ビショだぞ」幸助 俺は頷き 靴下を脱ぐ 「行けよ!!シャワー」幸助 綺麗好きでもないくせに それらしい口調で幸助は俺に指図する 面倒な顔をしてみるけど 今日はコイツの言う通りにしようと思う 俺は返事をしないで シャワーを浴びに行く シャワールームで先に蛇口をひねり水を出す ”シャーッ” お湯に変わるまでの間 俺は雑に服を脱ぎ捨てる 裸になって シャワーの中に行く 暖かい 頭からジャブジャブ シャワーにかかる 気が付くと 涙が出ていた 何を思ったわけではない ただ 汗が出るように 自然に涙が出て止まらない 次に気が付いたのは 胸の奥 ずっとずっと奥の方から 悔しさ 虚しさ はがゆさ がグイグイと押し出されるようにこみ上げてきた 俺は泣いた 声が出てしまうくらいに泣いた 長めのシャワーを終えて 部屋に戻ると 幸助はゲームをやめてこちらを見た 「どうだった?」幸助 どっちの事を聞いてるのかな? 奏での事? シャワーの事? 「何が?」愁 涙は出ていないけど まだ鼻声 泣いたことに気づかれてしまうかな? 「シャワー」幸助 幸助はこちらを見ないで言う もしかしたら 泣いていたことに気が付いて気を使ってるのか? 「ああ、気持ちよかった」愁 すると幸助が立ち上がり 背伸びをしながら 「スッキリしたろ?」幸助 そう言って 俺の肩をポンポンと叩いて部屋を出て行こうとした 「・・・どこ行くんだよ!って言うか話しは?」愁 幸助が立ち止まる 「俺が帰ったらなんか話があるって・・・話って何だよ」愁 幸助は少し下を向いて 次に上を向いて考える しばらくして 幸助はこちらを見て 「帰ったらじゃなくて 上手く行かなかったらって言ったんだよ ・・・奏ちゃんと上手く行かなかったの?」幸助 幸助は 知っていてか? 本当に知らなくてか?は分からなにけど 俺に言わせようとしている 俺は・・・この期に及んで 言えないでいると 幸助は少しほほ笑んで 「ま、いいや 色々思う事はあったけど 俺も考える時間ができて お前たちには感謝している」幸助 良く分からないことを真面目な顔で言った 「何だよ!それで?」愁 すると幸助は ウンウンと何度か頷いて 「ごめん愁 考えてたら状況変わった だから もう聞くな!! ちょっと出てくる」幸助 そして 幸助はこんな時間から出かけて行った その時の俺には意味の分からない事ばかりで 俺以外の人たちが何を思い 何を言いたかったのか 全く分からなかった きっと子供だったんだろう 俺だけが・・・
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