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コロナビール
タクシーに乗って
行き先を伝えたけど
約束の店はすぐそばで
ワンメーターしかかからなかった
俺は申し訳なくて
多めに支払いをして
「おつりは大丈夫です」愁
そういって降りた
店に入ったら
まだ10分以上前なのに幸助は既についていた
「おっ来た来た!!遅い遅い」幸助
俺は幸助の向かいに座る
「遅くねーよ
10分以上前だし」愁
幸助は既に
俺が好きそうな食べ物を注文していて
「今日は食え!!いつも節制してんだろ?」幸助
そう言って小皿に取り分けてくれた
「えっ?誰か来るの?」愁
幸助はスマホを見ながら
「ああ、唯香」幸助
俺は口に含んだお茶を吹きそうになる
「そうなの?」愁
幸助は変なものを見るような顔で俺を見て
「そうだよ
呼ぶだろ普通」幸助
そう言った
幸助は俺のリアクションに対し首を傾げた
それはそのはず
”俺たちは親友だから
他の友達とは別格
愁がどんなに有名になっても
俺たちの事は特別扱いしろよ!!”
と幸助から念押しされていて
こうしてこっちに帰るときは
三人で会うのは恒例で
今更
驚くことではない
だけど
俺は
さっき奏が言っていた
唯香の事が気になってしまって
どうにも意識してしまう
いや俺たちは友達だろ!!
心でその言葉を何度呟いても
気持ちはおさまらないでいた
「あ~唯香ちょっと遅くなるって」幸助
え?
そうなの?
少しホッとする
「まだ遅くなるの?
あいつ忙しいの?」愁
幸助は唯香に返信しながら
「ああ、忙しいんだよ
今って色々あるだろ?
先生は大変なんだよ」幸助
唯香は中学校の教員をしている
担当科目は国語
部活も持っているらしく
サッカー部の副顧問らしい
今日は部活の生徒が何やら問題があったようで
遅くなっているらしい
学校の先生だなんて
あいつらしい
でかい声で一生懸命に先生やってるんだろうな・・・思い浮かぶ
「さっきさ、お前
唯香が来るって聞いて何であんな顔したの?」幸助
幸助はやはり見逃さない
「・・・いや・・・それは・・・いいんだけど
ちょっと先に聞いていい?」愁
幸助は真面目な顔で
「いいよ
お前が今隠そうとしたことを
俺に正直に話すなら・・・」幸助
幸助はこの表情になった時には
ごまかしは通用しない
長年、付き合ってきて
もうわかっている
俺はある意味
腹を決めていた
「っで?何?」幸助
幸助はコロナビールにライムをポトンと落として
俺の方を見た
「お前さ・・・唯香と付き合ってたじゃん
どのくらい付き合ったっけ?」愁
「ん~二年・・・弱」幸助
「仲良かったのに
何で別れたの?
って言うか
別れても友達でいられるって
珍しいよね」愁
幸助は瓶を置いて
上を向く
そういう時は
いつもの様に
ふざけるのではなく真剣に考えている時
「お前のせいだよ」幸助
そう言うと
俺の方を見た
「俺のせい?
意味わかんねーし」愁
俺は幸助から目を逸らした
完全な図星だ
勘のいい幸助には
今、俺が何でこんなことを聞いているかだなんて
もしかしたら
手に取る様に分かってしまうのかもしれない
だけど
今日は聞きたい
俺は唯香の事が知りたかった
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