不埒

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不埒

楽しい時は 過ぎるのは早い 24時をすぎて お開きとなった 幸助は 「悪いけどさ 俺、この後が あるんだ お前、唯香送ってやれよ!! 一応、女なんだから」幸助 そう言ってニヤリと笑う きっと幸助に予定はない 俺に気を使ったんだろう 妙な目くばせをして 帰っていった 「愁、疲れてるでしょ? 私、大丈夫だから」唯香 唯香は気を使ってか? 送らなくていいという そういえば 唯香はいつもだな… 送るよ とか するよ とか 何かをしてあげたくても こちらを気遣って 一旦断る 女の子なんだから 有り難う って 簡単に受けとればいいのに 俺はそんな遠慮のようなものに 今日は 引き下がってはいけない 猿芝居をしてくれた 幸助に申し訳が立たない 唯香と二人になることなんて これを逃したら ないかもしれない 俺たちは昔し程 一緒にいれる時間は少ない 「送るよ 酔い覚ましに歩いて帰ろう」愁 そう言って俺たちは 50分の道を歩き出した しばらくは 無言だった 意識してしまう 今までは何も感じたことないのに・・・ 唯香は何を思っているのかな? 何か話さなきゃ・・・ 「学校・・・大変?」愁 唯香はにっこり笑って 「そうね 大変じゃないって言ったらウソかな・・・ でも 楽しいことも多いよ」唯香 「幸助が心配してたよ」愁 俺、どうして 幸助が・・・なんて言ったんだろう 俺だって 心配してるし・・・ 「幸助はああ見えて優しいからね ”あ~もうだめだ”ってへこんだ時なんかは 付き合ってくれて 愚痴聞いてくれるんだ・・・持つべきものは友だね」唯香 「唯香も愚痴ったりするんだ・・・」愁 「もちろん 愚痴るしへこむよ」唯香 「泣く?」愁 「・・・泣かない 泣かないように頑張る」唯香 「なんで?」愁 「泣くとさ・・・弱い自分に浸っちゃうでしょ そしたら 悪者にしちゃうでしょ? 相手を・・・それって嫌なの ずるいし そう言うの似合わないっていうかね」唯香 「別に・・・いいと思うよ 唯香だって女の子なんだから 泣いたってさ」愁 「・・・唯香だってって そうよ 私、女の子よ ずっと ま、愁の中では違うか 私は幼馴染で仲間だもんね 仲間に性別なしだね」唯香 唯香は寂しそうに微笑んだ 俺、何言わせてるんだろう・・・ 「あのさ、そうじゃなくて 俺、あのさ・・・」愁 言葉が出ない 「どうした?」唯香 唯香は俺の顔を覗き込む 近い 街灯に映し出された顔は 優しくて こんな感じだったっけ? 俺の中では かっこいい女だったんだけど 今日は・・・違って見える ドキドキする 「あのさ、唯香って今、彼氏いる?」愁 直接的な聞き方をしてしまった 唯香は固まる 「いや、答えなくていい」愁 俺、何言ってるの? 唯香、困ってるよ 「何?飲んでないくせに酔ってる?」唯香 俺は冷静に 冷静さを 意識しながら 「俺さ・・・最近 ちゃんと女の子と交際したいって思っててさ」愁 「え?ちゃんと交際してこなかったの? 愁は昔からもてるかなね・・・ ダメだよ 大切にしてあげなきゃ」唯香 「唯香・・・茶化さないで」愁 俺の真面目なトーンに唯香は立ち止まる 「ごめん」唯香 「あのさ、俺 鈍感だからさ・・・全く気が付かなかったんだけど 唯香・・・さ・・・ いや、俺さ まだ気が付いたばかりで かなり動揺してて 上手くは言えないけど 唯香の事が気になってる」愁 俺、中学生みたいなこと言ってる 唯香は固まる 「え?」唯香 聞きなおされた 「俺、お前の事が気になってる」愁 唯香は眉間にしわを寄せて 「っで?」唯香 え?なんか怒ってる? 唯香は明らかに険しい顔 「っで?って そういう事だから・・・どう思う?」愁 俺、最悪?そして最低 どうして唯香に聞いてんの?自分でも意味が分からない 俺たちの間に 微妙な空気が・・・ 「愁0点 今時、そんな告り方する? って言うか今、告ったんだよね? 私の生徒だって もっとうまいこと言って口説くよ!!」唯香 唯香はフェンスに腰かけてこちらを睨む 「中学生に口説かれてんの?」愁 俺は唯香の言葉を真に受けて 少し膨れる 「・・・なにそれ・・・子供か? まず、何が言いたいのか分からない 私になんて言ってほしいの?」唯香 唯香はかなり切れている 声の大きさで分かる 俺は負けたくない 「分かった ストレートに言うよ 付き合ってみないかって思ってる 今更になって お前の事 色々考えてる だけど さっきも言ったけど この気持ちが ほんのさっき気が付いたものだから だから だから 付き合ってみて 確かめたい」愁 素直に言った 唯香の眉間のしわが緩む これは・・・まさか 脈・・・あり? 「いやだ」唯香 え? 今”いや”って言った? 「嫌だ 付き合ってみるって何? さっき自分で言ったじゃない? ちゃんと交際したいって ”みる”って お試し?」唯香 「確かに」愁 「私ね もうけっこう良い年齢なの お試しされる余裕 正直ない しかも この友達関係 消滅する覚悟で”みる”なんて・・・本当に無理 愁マイナスだよ マイナス100点」唯香 唯香はいつだって正しい 俺、そう言われなきゃ 全く気が付かなかった 唯香は 告るなら それなりの覚悟をしろ!!!と言っている そうだ 唯香がこれまで 幸助や奏が言ったように 俺に対して何らかの気持ちを持っていたのに 一言も言わなかったのは やはり この友情が大切で 中途半端な恋心を 天秤に乗せることすら 自分の中で否定してきたんだ そのくらいの覚悟で 唯香は俺に対しての気持ちを抑えてきたのに 俺は何とも不甲斐ない 唯香 怒るはずだ 「唯香・・・ごめん」愁 唯香は小さくため息をついて 俺の横をとおり 先へ行こうとする 「唯香」愁 俺は唯香の右手を掴んで 先に行く彼女を足止めした 「わかった 俺、お前にちゃんと向き合ってなかった 俺、お前の事が好きだ めちゃくちゃ気になってる だから おれの彼女になって」愁 唯香は呆れた顔でこちらを見て 「だから・・・気になってるとか そう言うちっちゃな気持ちで 大きな決断をしないで!」唯香 唯香は俺の手を振り払う 俺は唯香の腕をもう一度掴んでこちらに引きよせて 「じゃ、どうしたらいい? どうしたらおれの気持ちに応えてくれる?」愁 唯香はしばらく面倒そうに考えて 「・・・結婚するとか・・・かな」唯香 唯香は小さく呟く 「それくらいの覚悟がないなら そういう事は言わないでほしい そのくらいのことだから」唯香 そう言って 驚いて何も言えない俺に笑いかけた 結婚 考えたことは無い 今までそんな事 しかし 唯香が言う通り この友情をかけての恋愛なのだから そのくらいの覚悟は必要だ 言われて初めてそう思った 俺はやはり 浅はかな その場しのぎの男なのかもしれない 唯香にはそんな不埒な気持ちが見透かされていたようで 俺は恥ずかしくなった
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