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土曜日、イタリアンレストラン『カリーノ』に、琴美は淳と座っていた。
「遅いなぁ、沙也加」
沙也加から誘ったのに、彼女が遅刻とは一体どうしたことか。
電話してみようか、と思いかけた時、ドアベルが鳴った。
沙也加だ。
「あ、沙也加。こっち!」
挙げた片手が、ぎこちなく止まった。
沙也加の後からついてきたのは……。
「……男!?」
男連れ。
沙也加が、男連れ!
「遅くなってごめんね、琴美。彼の仕度に手間取ってさ~」
「沙也加、あの、こちらは?」
「あたしの彼氏♡」
男は、淳より10倍男前だった。
「神 光(じん ひかる)です。よろしく」
沙也加はトドメに、左手をかざして見せた。
薬指に、燦然と輝く婚約指輪。
1カラットのダイヤモンドが、眩しい。
「あたしたち、結婚するんだぁ♡」
琴美は引き攣った笑いを、沙也加に向けた。
「おめでとう、沙也加」
(ま、負けた……)
目の前で、光が沙也加の椅子を引き、彼女を座らせてあげていた。
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