不器用な贈り物を君に

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まだ諦めきれていないことに苛立ちを覚えつつ、ピシャンと頬を叩いた。 「いい加減忘れろよ・・・。」 初恋を引きずりに引きずって、この間できた何人目かの彼女にも誰か他に好きな人がいるのかと問い詰められている。別に向こうから告白されただけだから振られても構わない。 構わないけれど、誰かといないと律のことが忘れられそうになくて困っている。 他人を律の代わりにしているというのは言い方が悪くても事実だった。 「誠太~?朝御飯よ!早く来なさい!」 階下から母さんの声が聞こえる。何の夢を見ようが眠かろうが関係なさそうな声で。 「今行くよ。」 階段を一段飛ばしで降りていくと、朝食を作りながらテレビに集中している母さんがいた。 「おはよ。父さん、母さん。」 「ああ、誠太おはよう。はい、これあんたの。」 皿の上にとんっと置かれた目玉焼きにがジューと音を立てる。 「いただきます。」 手を合わせると母さんがしーっと人差し指を立てた。 最近星座占いにはまっているようで、見逃すと原因がこちらになくとも怒られる。 父さんと顔を見合わせ占いの何がいいんだろう、と二人で首を傾げて、でも気になって見る。 「きたっ!水瓶座・・・総合運は花四つ、仕事運花五つ!?よっしゃあ仕事がんばろう!!」 占いを鵜呑みにしてはしゃぐ母さんをはいはい、と受け流す。 「今月は新しい風が吹くですって、何のことかしら?楽しみ!」 八月に新しい風が吹くことはあるのだろうか。黙々と朝食を口に運ぶ。 「あら、あんたの天秤座恋愛運五つよ!」 「・・・あっそ。」 あいつの誕生日は来月だから今月の運がいくら良くてもいまいちだな。 などと、ちゃっかり占いの影響を受けている。 「そういや誠太、いま彼女いるのか?」 さっきまで静かだった父さんまで首を突っ込んできた。 「一応、いる。」 すでに愛想をつかされているけど、とまでは言えない。 「そうかそうか、そりゃ良かった。」 満足そうに父さんが笑ったが、何が良いのだろうか。 「昔は幼馴染の律君が好きって言っていたから、心配だったけれど大丈夫そうね」 その言葉に、さすがにチクリと胸が痛む。 大丈夫ってなんだよ。俺が誰が好きだっていいだろ。律のことは今でも好きだ、けれど。 「もうこんな時間か。ほら誠太早くしないと遅刻するぞ。」 言われなくてもわかってるよ。無言で食器を重ね、キッチンへ持っていく。
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