初詣の願い事

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 篠本美和はちらりと横目で、釘宮悠馬がまだ目を閉じて手を合わせているのを確認すると、慌てて目を閉じて、両手のひらに力を入れ直した。  二礼二拍手一礼の続き。心のなかで改めて願い事を一つ。  下げた頭を持ち上げて振り向くと今度はちゃんと悠馬と目があった。マフラーを首周りに巻いた同級生の受験勉強仲間。 「願い事はできた?」 「あ、うん、バッチリ」  後ろに並んでいる人もいるので、美和は悠馬のあとを追うように石段を降りていく。  一月二日。元旦当日はお互い家族での行事があったから、二日に合格祈願の初詣へとやってきたのだ。  鐘とお賽銭箱の前には数人並んではいたものの人は多くない。新年に入っても続く外出自粛のムードもあるし、そもそもこの神社は観光地でもなくて、日頃から人は少ない。 「寒いね。寒くない? 大丈夫」  悠馬が肩をすぼめながら、コートのポケットに両手を突っ込んで、腕を伸ばす。美和は何度かうなずいた。 「お正月だしね。毎年、初詣は寒いよ」 「だよな。風邪引かないようにしないとな」 「だよね。でも、例年に比べてインフルエンザも流行してないみたいだし、風邪も少ないんじゃないかな?」
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