25歳のネバーランド

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- 第2章 -  車の中でいつの間にか眠りこけていたアサミが目を覚ますと、そこは普段と全く変わり映えしない場所だった。彼女が毎日通勤している、都心の風景に瓜二つ。 「さあ、着きましたよ。ネバーランドに」彼女の横で、ピーターさんが爽やかな笑顔をみせる。 「着いたって……全然普通の世界と変わらないじゃない」  そこはもう朝。ビルが立ち並び、車や人が大勢行きかういつもどおりの街。 「まあ、一見そうだけどね」 「てかもう朝じゃん会社いかなきゃ。なんだもうあんたに騙されたよ。あーシャワー浴びる時間もない、しょうがないちょっと化粧だけなおしてそのまま行くか」 「いってらっしゃーい」  車から降りて、オフィスに向けて歩いてゆくアサミに、ピーターさんは爽やかに手を振る。  会社の建物も、その中のオフィスも、アサミの机も、すべてが昨日までのままだった。ある一点だけを除いて。  上司も、部長も、お局さんも、みんなそろって若者になっていたのだ。アサミの上席に座る上司も、あれだけつるっぱげだったはずなのに、髪がフサフサで肌もツルツルだ。 「お、おはようございます……」アサミはおずおずと声を発する。 「おはよう、今日もがんばろうね」見慣れない上司の笑顔と白い歯がまぶしい。  アサミにとって、それはそれは奇妙な体験だった。社内の人も、取引先も、全員が若者。いつものようにおやじギャグに無理やり愛想笑いをする必要もなければ、ねちっこいセクハラ発言もないし、給湯室に行ったとて、お局に意地悪なことを言われることもない。  ああ、純粋に仕事だけすることってこんなに快適なことだったんだ、とアサミは喜びのため息をもらす。  楽しいのは、職場だけではなかった。オフィスを出て家に帰る間も、若者しかいない。街行く人、皆が若さにあふれ、美しい。  商店も、よくよく見れば若者向けのものばかり。テレビ番組も、いろいろなサービスも、アサミを喜ばせるものばかりだった。  アサミはそんな生活がすっかり気に入り、そのまま数か月が過ぎた。
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