第一章『夢失く師の住み処探し』プロローグ 狛犬の狐と巫女3

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第一章『夢失く師の住み処探し』プロローグ 狛犬の狐と巫女3

「痛ってて……」 創希は、後ろに倒れた体を前に起こし、草むらの方を向いた。 「狐……」 いや、大人の狐にしては小さいような気がするので子狐と言った方があっているのかもしれない。そんな風に思うのだが、創希にとっても、本物の子狐を目の前で見るのは、これが初めてだ。この場所は、田舎か都会のどちらかと問われると田舎と答えるような場所なのだが、そこまで自然豊かで野生の動物が沢山出てくるような場所ではない。 「ここにも、野生の子狐がいるんだな」 創希が初めて間近で見る狐に関心していると、子狐の方から創希の方へ近づいてきてくれた。 「撫でて良いか?」 創希は、間近で見る子狐の可愛さに耐えられず、手を子狐の頭の方へ伸ばす。 「ク~ン」 子狐は、犬のように尻尾を振っている。やはり、テレビで見るのと間近で見て触るのとでは、可愛さがあまりにも違いすぎる。 ここは、思い切って餌を与えるのはどうだろうかと、創希は自分自身に問い掛ける。今、創希は鞄の中には朝、本屋に行く途中にコンビニに寄って買ったサンドイッチが入っている。だが、野生の動物に餌を与えるのは良くない。 どうするべきかと考えていたが、創希の中では、狐の可愛さが勝ってしまっていた。 「食うか?」 創希は、鞄からコンビニで買ったサンドイッチを取り出し、袋を開けて子狐に差し出してみる。 「ク~ン」 子狐は、尻尾を振りながら、サンドイッチを持つ右手の方を目を輝かせながら見つめている。 「よし、良い子だ」 創希が、子狐の頭を撫で、サンドイッチを子狐の口の方へ持っていこうとしたその時だった。 「こらっ!君、ダメじゃない。野生の狐さんに勝手に餌をあげようとして」
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