第1章

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「プロの目線からすれば、護衛は必要ですが二チームは必要ないということですが……さて、どうしましょうか?」 「あの……」 「簡単な話です。元々、エミリアさんの方へ頼んだようなものですし、こちらは遠慮させていただきます」  マイカはここぞとばかりに依頼を断った。 「あっ、あの、それは困ります」  エミリアが焦った口調で割って入った。 「エッ!?」  マイカは当惑した表情をエミリアに向けた。その挙動不審振りからは、何か隠し事を秘めているのが垣間見えた。 「いいえ、違います。あの……そうですわ。ユニバーサル・コントラクターのお仕事は初めてですし、慣れるにはちょうどいいお仕事かと……あの、でも、初めてですし、マイカさんが力を貸してくださればですね……」 「そういえばですね、手紙をお預かりしていたのを忘れていましたわ」  学園長はしどろもどろに話すエミリアを助けるように、わざとらしい仕草でマイカに向けて封筒を差し出した。  マイカは訝しげな表情で手紙を受け取ると、差出人の名前を確認した。 「えっ、ママ!?」  思わず叫んでいた。  今時家族のやり取りに紙媒体など珍しいの一言だったが、マイカにとって母親からの手紙は最後通告であったのだ。ブラナー博士への頼み事は増える一方であり、先日の母親との食事の約束はドタキャンしたばかり。怒られるには思い当たる節が多過ぎた。 「すみません……読んでもいいですか?」  マイカは封筒の隅に書かれた”すぐに読んでね”の文字を見つめながら学園長に問い掛けた。 「そうですね。読まないと、きっと恐ろしいことになるのでしょうね」  学園長は優しく微笑みながら答えた。  マイカは学園長の微笑みの奥に企みを感じつつも、今は目の前の恐怖に立ち向かうしかなかった。封筒を開封し、手紙を読み始める。そして、完全にハメられたことを実感していた。  マイカは顔を上げると引きつった笑みのまま口を開いた。 「今回の依頼、引き受けさせていただきます」  今のマイカたちにしてみれば、ただの護衛依頼など断って当然であった。しかし、まさかこのような結果が待ち受けていようとは想定もしていなかった。同行すると言ったミウの申し出を断っていなかったらと思うとゾッとした。こんなことがミルアに知られては、鬱陶しい事態を招くことは楽に想像ができたのだ。
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