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 いずれ確かめてみたいと思う。本当は今すぐにでもそうしたい。何か不穏なことが連続しているように思われる現在、その根源が秘薬を使ってしまったことにあるという疑念もある。それ故、自分のことも含めて、この際全てを父に明らかにして欲しいと感じる。 だが……。  掃除をしながら、陽奈は拝殿の側で話をしている人達を見た。  父が2人の男性を相手にしている。1人は福沢だ。もう1人は始めて見る。確か、羽黒と名乗っていた。更に、その2人に付き従うようにして4人の大柄な男達もやって来た。今は境内を離れて見てまわっている。  福沢は以前から、この神社に伝わる秘薬を欲していた。不穏な状況になってから、その度合いが強まっているような気がする。そして、羽黒を初めとする得体の知れない不気味な男達がついてくるようになった。  あの男達からは、良くない気を感じる。彼等が頻繁に現れている時は、おとなしく密やかにしておいた方がいいと思っていた。父とじっくり話をするのは、落ち着いてからがいいだろう。  父達のいる場所は、自然と最後に掃除することになった。少し離れた所を何度もほうきで掃きながら、様子を窺う。  彼等の声も聞こえてくる。  「あなたの研究熱心さは認めるし、おっしゃるような古来からの秘薬もどこかに存在するのかもしれない。しかし、それはここではありませんよ」  父が福沢に向かって言った。これまで何度も繰り返された会話だ。  やれやれ、という感じで苦笑している福沢の顔が見える。その横で、羽黒という男は感情をまったく感じさせない様子で立っていた。まるで機械のようだ。  「私はね、御厨さん」懲りずに続ける福沢。「ここ最近妙な事件が続いていますが、それは、その秘薬の影響があるのではないか、と思っているんですよ。いや、その裏付けもないわけじゃない。警察の捜査状況をここで明かすわけにはいきませんが、私が伝え聞いたところによると、人外である何者かの仕業、という声もあがっている」  「人外、ですか? それはまた、荒唐無稽な……」  ほう、と驚いたような表情になる父、御厨鉢造。
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