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 「あの親子は、何かを隠しているな」  車に乗り込むなり、羽黒基樹が言った。影狼神社の少し先、目立たない所に停めてあった。運転する者は待機させていて、羽黒と福沢が後部座席に乗り込むとともに発車させる。他にも助手席に1人、部下が乗っていた。  すぐ後に、さっきまで付き従っていた4人の乗る車が続く。  「必ず、古来から伝わる秘薬はあるんだ。あの神社のどこかに隠されている」  隣の福沢が勢い込んで訴える。  「それはまあ、そちらの都合だが……」  苦笑する羽黒。この福沢という薬学者が伝説の秘薬に執心し、それを分析、研究したがっているのは知っていた。また、その秘薬の効能が彼の説明するとおりなら、今後この公安に秘密裏に設置された裏部隊にも使えることだろう。  だが、今は、羽黒にとってそれは二の次だった。自分の任務は、日の出製薬の裏事業について調べている者がいたら秘密裏に処理すること。そして、日の出製薬上層部の人間や理事を殺害している者を、速やかに処理することだ。  今日の朝方、神奈川県警の公安第三課にある大森班の秘密拠点に乗り込んだ。そして、班長である大森に脅しをかけてきた。  あれは(したた)かな男だ。一筋縄ではいかない。だが、馬鹿でもない。我々に逆らって動くことがどれだけ危険であるか、理解したはずだ。少なくともしばらくは自粛するだろう。  問題があるとすれば、大森の部下で草加の同期でもあるという、池上という捜査官だ。  大森に脅しをかけたことでそいつも諦めていればいいのだが、もし意地になって調べ続けるようであれば、始末しなければならない。  そして更に大きな問題は、殺人を繰り返している方だ。どうやら、二組、もしくは2人いるようだ。
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