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壁から落ちて斜めになっているホワイトボードが目についた。当時の勤務状況などがそのまま書き残してある。
ん?
池上は気になり、きちんと立てかけて読み直す。
当日勤務中――つまり人狼に襲われた時にその場にいた警官達の名前が書かれている。この5人が被害者だ。
事件の詳細はマスコミには伏せられていたし、同じ警察官であっても捜査に関係ない者には伝わっていない。これは、始めて見る情報だ。
坂田、小山、井口、森田、羽倉……ちょっと待てよ。
池上はハッとなり、タブレットを取り出す。そして、大森が託してくれた文書ファイルを呼び出した。
「どうかしたの?」
エリカが側までやって来てのぞき込む。
「やはりそうか」
「なにが?」
「このホワイトボードに書かれた5人は、当日人狼に殺された者だ。そしてこれが、半年前の日の出製薬研究施設の火災の際、草加と一緒に駆けつけた者……」
タブレットを差し出しエリカに見せた。
「同じ名前……」
エリカも息を呑んだ。
「ああ。草加は日の出製薬を探っていたが、その動きは敵側に読まれていた。そして、火災の時には、その敵側の人間の罠にはまって炎の中に取り残されたのかもしれない。もしそうだとしたら、その敵側の人間というのは……」
「この5人?」
「たぶんそうなんだろう。そして、人狼はその5人が分署にいる時を狙って襲った」
つまり……とその先は口にできなかった。エリカも察したようで、黙って頷くだけだ。
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