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分署の跡地を出ると、2人はその足で、日の出製薬研究施設の跡地に向かった。
こちらはかなり森の奥にあり、まるで人目を避けるかのような感じで建てられていた。
しかも……。
「むやみに近づけないみたいね」
エリカが鋭い視線をあたりに向けながら言った。
「ああ。作動中の監視カメラがいくつか取り付けられている。それに、けっこう頻繁に人が行き来している痕跡もあるな」
「まだ使われている、っていうこと?」
「いや、取り壊すことになっているはずだ。何者かが、今だけ使用しているのかもしれない。日の出製薬の関係者か?」
「それにしては物々しすぎない?」
2人して、遠くから研究施設の建物を見る。三分の一程が破損していた。あれが、火災があって爆発した箇所だろう。
現在研究施設を利用しているのがどんな連中かわからないが、深入りして事を荒立てるような段階ではない。まだ、ジャーナリストとして取材中、という形を取っている。とりあえず戻ることにした。探りを入れる必要があるなら、夜がいいだろう。
「この後、神社を訪ねたい。一緒に来るか?」
池上がエリカに訊く。
「神社? 神頼みでもするつもり?」
「それもある」苦笑する池上。「だがそれだけじゃない。狼信仰だ」
「狼信仰?」
怪訝な表情になるエリカ。美女が顔を顰めるのもまた絵になるな、と余計なことを考える池上。
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