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 「この地には、古来から狼を信仰する宗教が根付いているらしい。妙な符合だと思わないか?」  「どういうことだか、教えてくれるわよね?」  「ああ。まだ仮定の段階だが……」  池上は、これまで得た情報や知識を隠すことなく説明した。そして、自分の考えも。  狼信仰のこと、それが今回の人狼出現に大きく関わっているかもしれないこと、草加の過去、そこから導き出される可能性……。  「つまり、池上さんは、人狼は……」  「おまえもある程度気づいていたんだろう? さっき、なぜ分署が襲われたのかも想像できたし、たぶんそれに間違いない。だとすると、人狼の正体は、草加恭介……」  本当は、そんなふうに考えたくはない。だが、ここまでのことから想像すると、どうしてもそう感じられてしまう。  「確かに、そう思うと納得できるわね。人狼が警察官の格好をしているのも、彼なりの正義の表現なのかも……」  言いながら目を伏せるエリカ。彼女は悪党しか殺さない。彼女なりの正義感に基づいているのかもしれない。だから、人狼となって悪を狩ろうとする草加に共鳴し、あるいは哀れみを感じるところもあるのか?  草加は正義感が強すぎた。それが、古来からの秘薬によって更に高まり、沢の北峠近辺では、軽微な悪事さえも許さずに力を行使してしまったのではないか?  あくまでも、池上の推理にすぎない。それが正しいかどうかを確かめるために、影狼神社を訪れてみたい。  もう一度視線を交わし、頷き合うと、池上とエリカは車へと向かった。
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