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 草加の意思が不思議な声となり、続いて聞こえてくる。  俺はそれでかまわない。人の心などなくていい。これからも、悪を狩り続ける。それでいい――。  「そんな……」息を呑む陽奈。「そんなの良くない……」  わかっている。人は人として生き、人として死んでいくのが一番良い。そうだろう。でも、俺は例え人でないものになってしまったとしても、ヤツらを許さない。ヤツらを全部殺すことができるなら、その後は人でないものとしてこの世に残り続けてもいい――。  「恭介さん、いったい何があったの?」  陽奈ちゃんは、知らなくていい。そんな人の穢れたところは、知らなくていい――。  「私は影狼神社の後を継ぐ者です。秘薬によって何が起こったのか知り、理解し、後世に伝えていくのも勤めです」  陽奈ちゃん――。  目を瞑る陽奈。自らの意思を辺りに浸透させていくようなイメージを持った。そうやって、草加の意識を探す。  つながった……。  はっきりした場所はわからない。しかし、草加は陽奈が意思を浸透させていった範囲にいる。それだけで充分だった。彼の意識とシンクロ(同調)し、過去を見る。  ……それは、目を背けたくなるような出来事だった。  草加はいつもの夜勤同様に、分署に詰めていた。同僚2人も同じ勤務だ。それ以外に、3人がまだ残って書類整理などをしていた。  夜9時を過ぎた頃、警報が鳴り響いた。火災発生の知らせだ。場所を確認すると、日の出製薬の研究施設だという。  草加は多少怪訝に感じた。自分がこの分署に潜伏したのは、その研究施設を調べるためだ。日の出製薬は、化学兵器転用可能な薬品類を海外へ秘密裏に流している疑いがある。その拠点がこの施設だと見ていた。  班長から課長、そして部長まで動かして、出向というかたちで研究所近くのこの分署に入り込むことに成功した。それからすでに1ヶ月近く経つが、概要はある程度わかってきたので、そろそろ研究施設内を調べようかと思っていたところだ。  そこで火災? 何か、不穏な感じもする。だが、チャンスでもある。救助や火災の捜査のために、堂々と研究所内に立ち入ることができるのだ。
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