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 怪しむ気持ちより、このチャンスを捜査に活かすことができるという期待の方が勝った。  草加は勇んで研究施設に向かった。一緒にいた5人の同僚達とともに……。  火災が発生しているのは研究所の一番奥の方だった。研究室や事務室の他に、実験のための部屋があるという。そこから火の手が上がったらしい。  消防はまだ到着していなかった。山道であり、大型の消防車は上ってくるのに難儀するだろう。  到着前に現状をできる限り把握しておこう、と草加や同僚達は実験室になるべく近づいた。そこで、驚くべきものを目にした。  なぜか、実験室には鍵がかけられていた。そして、強化ガラスの向こうに人が3名、後ろ手に縛られて倒れていたのだ。白衣を着た男女1名ずつとスーツの男性1名。  まずい。すぐに救出しよう。  そう言って、鍵を探す草加。だが、同僚5人の目つきが変わった。  どうした?   声をかける草加に、いきなり後ろから同僚が警棒を振り下ろした。  後頭部に激しい打撃を受け、草加は膝をつく。そのまま前のめりに倒れそうになるのを、必死に堪えた。  そこへ、別の同僚がまた警棒を叩きつけてくる。避けようとしたが、肩口を打ち据えられついに倒れてしまう。  5人の同僚は、草加から銃と警棒を取り上げた。そして、背中や頭を容赦なく蹴りつける。いつしか草加の意識は薄れていった。  自分の身体が持ち上げられるのを感じた。実験室のドアが開く。鍵は同僚の1人が持っていた。  なぜ? いや、そうか、こいつらは……。  迂闊だった。日の出製薬には、警察組織に影響力を及ぼす程の協力者もいたのだ。このように、草加の行動を見張り、罠にかけることができる者を作り出すのは容易だ。もっと気をつけるべきだった……。
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