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 草加も実験室に閉じ込められた。その時には全身に激しいダメージを負っていた。  倒れていた3人が目を覚ます。話を聞くと、日の出製薬の不正に嫌気がさし、離脱を考えていたようだ。それに気づかれ、拘束されたらしい。  草加は3人の拘束を解き、何とか実験室から出る手立てを考えた。だが、火の手が次第に大きく押し寄せてきて、実験室を包み込む。  3人は泣き叫び、必死に助けを呼ぶだけとなった。それでも草加は何とか脱出を試みる。ガラス壁をたたき割ろうとしたり、ドアに体当たりをしたり、と自らの身体が壊れそうになっても繰り返す。  しかし、頑丈に造られた部屋はびくともしなかった。ガラスの向こうには、既に炎が蔓延している。  他の3人が半狂乱となる。声が室内に響き渡る。それが、突然の爆発音によってかき消された。  どこかに隙間ができたのだ。そして、実験室内の空気と外部の炎が一気に反応し合い、バックドラフトを起こした。  凶暴な怪物となったかのように襲い来る炎に全身が焼かれた。爆風に身体が吹き飛ばされた。死を覚悟した瞬間に、意識は途絶えた。  だが……。  真っ暗な中で、草加は目を覚ました。重い。何かに押しつぶされている。  必死に身体を動かした。崩れ落ちた瓦礫を掻き分け、潰れた実験室から這い出す。  夜空に月が浮かんでいるのが見えた。その下では、まだ研究施設が燃え続けている。  瓦礫の中には、先ほどの3人の欠片がバラバラになって混ざっていた。指、腕、足、あるいは胴体の破片……。  自分の左手首の先もなかった。  しかし、なぜか生きている。いや、生きていると言えるのか?  身体を確かめると、皮膚は爛れ、未だに熱を持っていた。血まみれの身体に更に熱が襲いかかり黒焦げになっている。  生きる屍……。しかし、なぜ、まだ動ける?  痛みは残るし、全身が重く、動きは緩慢だ。それでも死んではいない。いや、死にきれていない、と言った方が良いのか……。
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