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 思いつくことがあった。もう10年以上前のことだ。チンピラ達に袋だたきに遭い死にかけたとき、影狼神社の御厨さんに不思議な薬を飲ませてもらった。そして、奇跡的な回復を見せた。その時の効能が、まだ残っているのか?  ならば、またあの薬を飲めば……。  そう考え、草加は影狼神社を目指した。地を這うようにゆっくりと……。  たどり着いたときには、すでに命が尽きかけていた。その時に、陽奈がこちらに気づいてくれた。なので、必死に訴えかけた……。  彼女に薬を飲ませてもらった草加は、御厨が現れたのを感じて身を隠した。これ以上一緒にいて、あの親子に迷惑をかけてはいけない――そう考えたからだ。  森へ逃げ込んだ彼の身体には、次第に人とは思えないほどの力が漲ってきた。しかし同時に、自分とは違う意思のエネルギーのようなものが充満していった。  俺は、何か別の者になろうとしている……。  いい。それでもいい。ただ、その前に、どうしてもやらなければならないことがある。ヤツらを、日の出製薬に群がる悪徳の者達を、皆殺しにする。  悪を狩る。それができるなら、おまえに力をやる――。  そう言われたような気がした。  望むところだ……。  草加は森の奥まで走ると、そこから月に向かって高らかに咆哮した――。  ……そこで、草加の意思が激しく動いたのか、シンクロ(同調)させていた陽奈は我にかえった。  こんなに酷い目に……。  陽奈の胸が激しく痛む。強い復讐の意思を持ったとしても仕方ないと思えた。しかし、だからといって、このままにしておいては、彼は怪物と化しいつまでも殺戮を繰り返す……。  悲しみや葛藤とともに、激しい疲労も感じた。草加の意識にシンクロ(同調)させるために、力を使いすぎた。  何も言えずにガックリと肩を落とし、佇む陽奈。  その後ろから気配がした。目を向けると、見知らぬ男が4人、近づいてきた。山道だというのに、キッチリとしたスーツに身を固めている。
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