78人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
「あ、あなた達は……?!」
ハッとなる陽奈。おそらく、福沢やあの羽黒という男についていた者達と同類だ。
「草加恭介はどこにいる?」
男のうちの一人が訊いてきた。
「何のことですか?」
「さっき、名を呼んでいただろう?」
つけられていた……。普通の状態であれば、気づいただろう。陽奈は感覚が優れている。だが、草加を探すために気を向けすぎて、余裕がなかった。
陽奈に声をかけた男以外の3人が、辺りを探すために動く。しかし、見つけられないようだ。
「草加はどこだ?」
男が陽奈の腕を掴む。強い力だ。細い腕が軋む。
「い、痛い……!」
思わず顔を顰める陽奈。必死に振りほどこうとした。
「草加恭介。出てこないなら、この娘を連行し、尋問する」
男が森へ向けて大声を張り上げる。
「いやっ、放してっ!」
抵抗する陽奈の首筋に、男は手刀を打ちつけた。彼からしたら軽いつもりだったのだろうが、屈強な男の攻撃を受け、陽奈は激しい痛みを覚えた。
「きゃああぁっ!」
叫び声を上げ、その場に崩れ落ちる陽奈。男が彼女を無理矢理立たせようとする。
しかし……。
男の手が陽奈から離れた。そして、森の方を凝視する。
他の3人の男達の視線も集中した。
木々に囲まれた森の中から、警察官が現れた。ガッチリとした体格。鋭い眼光。そしてその顔は、まぎれもなく草加恭介だった。
「恭介さんっ!」
立ち上がり、駆け寄ろうとする陽奈。
最初のコメントを投稿しよう!