83人が本棚に入れています
本棚に追加
36
陽奈が去って行った後、男達は即座に銃撃を開始した。
激しい銃声が、森の中に響く。
だが、弾丸が草加――人狼に命中することはなかった。
素早く動く人狼に、男達の動きは追いつくことができない。
一人、また一人、とその鋭い爪に切り裂かれ、木々の緑が、夥しい血に染められていく。
最後に、先ほど陽奈を取り抑えていた男が残った。
「う、うわぁぁぁ……!」
目の前に迫る人狼。男は必死に何度も銃爪を引く。しかし、すでに弾は尽きていた。
人狼は右手を高々と掲げた。その先に、鋭く光る爪。
「ひぃっ!」
男が背中を向けて走り出す。
人狼はサッとその後ろまで迫ると、右手を翻す。
男は後頭部から首筋にかけて切り裂かれ、血飛沫を上げながら倒れた。
人狼が更に腕を構え直し、男の背中から心臓を……。
直前で動きが止まった。何かを考えている。そして、倒れている男達4人の死体に、ゆっくりと視線を向けた。
しばらく時が流れた。
人狼はただ、立ったまま何かを待っている。
倒れた男達の死体が、ピクリと動いた。手足の先が痙攣しているかのように震え出す。
それぞれの口から、グルル……という唸り声のようなものが漏れはじめた。
それを見て、人狼はゆっくりと歩き出す。森の中へと、戻っていく。
男達の死体が、むっくりと起き上がった……。
最初のコメントを投稿しよう!