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路上に座り込んでいた大川が、唖然としてエリカを見た。
「き、君は……?」
ワケがわからない、という表情で訊いてくる。
「感謝してね。切り裂かれたり咬み千切られたりする痛みは、感じずに済むわよ」
そう言って、エリカは銃爪を引く。弾丸は大川の心臓を貫いた。
辺りを見まわすエリカ。公安裏部隊の連中は4人だけらしい。車の前の席では、大川の秘書と運転手が肩を押さえながら蹲っている。痛みを堪えているだけでなく、身を隠してもいるようだ。
まわりは閑静な住宅地。深夜とは言えこれだけ騒がしかったので、そろそろ警察に通報されていたとしてもおかしくない。あまり時間はないだろう。
エリカは3人を射殺した拳銃をしまうと、別の銃、S&Wを取り出した。これでも死なないことはわかっているが、マグナム弾はある程度人狼の動きを止められる。
倒れている人狼を見る。いや、もう倒れてはいない。むっくりと上体を起こすと、立ち上がった。
こちらを見ている。
エリカはS&Wをいつでも駆使できる体勢をとりながら、人狼に向かい合った。
「獲物をとってごめんね。でも、こいつは私のターゲットでもあるの」
人狼の紅い目が、更に光を増したような気がした。
「どうする? 横取りした私のことも殺す? そう簡単にやられるつもりはないわよ」
しっかりと睨みつけながら言うエリカ。
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