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 今日も山下公園は賑わっていた。秋の陽射しを受け、海も輝いている。  この間と違うのは、池上より城島の方が先にベンチに座っていたことだ。  例によって、他人の相席を装い座る池上。視線を合わせずに話を始める。  「あの事件の目撃者の少女がいる病院に現れた刑事というのは、おまえか?」  城島が問いかけてくる。  「どこまで聞いている?」  逆に質問する池上。  溜息をつくと、城島は応え始める。  「瀬山利里亜についていた警官2人が、神奈川県警の田中という刑事の指示を受けて異常者に対応しようとしたが、返り討ちに遭って負傷した。田中という刑事はその後姿を消したらしい、という話だな。病院内で派手な銃撃戦があったようだが、負傷者はその警官2人だけだ」  「それだけか?」  「俺の所に入ってくる情報は、それだけだ。それに、どうも、連続猟奇殺人事件の捜査については、一部の派閥の息がかかった班だけに絞られるようになってきた。俺の班はそれからは外れていきそうだ」  「一部の派閥?」  怪訝そうな表情になる池上。  「ああ、噂では、石部派閥と言われている」  「石部? 警察庁関東管区警察局局長の、石部徳馬か?」  「そうだ。あのお方は、元は公安出身の官僚だろう? おまえの方が詳しいんじゃないか?」  「いや、公安の中も複雑なんだ。俺のいる班は末端の離れ小島と言っていい」  自嘲気味に言う池上。実際に、大森は有能だがひねくれ者で、大きなものに巻かれるということをあまりしない。そこが、池上としても信頼しているところだ。
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