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 「イヤな噂もあるな。公安の中でも汚いことをする裏部隊みたいなのがあるとか? 石部はそこから繋がっている、っていう可能性もあるのか?」  城島が探るような目で訊いてくる。  「あくまでも噂だと思っていた方がいい。おまえが自身の今後を考えるなら、な」  「余計なことは知る必要はない、か……」  肩を竦める城島。  公安の裏部隊が本格的に動き出したらしい。池上やエリカ同様、猟奇連続殺人と日の出製薬関係者殺害の一部が、同一犯だと認識したのだろう。それが人狼だとわかっているのかは不明だが。  池上にも具体的にどこの誰が指示を出しているのかわからない。日の出製薬やその協力者である政財界の大物の仲間に含まれる、警察官僚がそうなのだろう。そいつは、石部派閥も動かして捜査をいいようにねじ曲げようともしている。このままでは、日の出製薬の不正についても有耶無耶にされ、それを調べようとしていた草加の死の原因も闇に紛れて消えていく。  そんな事にはさせたくない――。  険しい表情になってしまったらしい、城島が心配そうな視線を向けてきた。  「おまえは、これからも調べを進めるのか? たぶんそろそろ、目をつけられるぞ」  「かもしれない。だが、もう戻る気はない。とことん調べる」  エリカという名の暗殺者としばらく共同戦線を張ることになった、などと言ったら驚くだろう。もちろん口にすることなどできないが。  「命は大切にしろよ。その、草加という捜査官が本当に謀殺されたんだとしたら、同様の目に遭うかもしれないぞ」  「ああ。おまえにも迷惑がかかるかもしれないから、もうこの件で会うのはここまでにしよう」  「いや、俺はいいんだが……」  申し訳なさそうにしながら、言葉を濁す城島。こいつも本来は、草加ほど過剰ではないにしろ正義感の強い男だ。しかし、結婚もしているし子供もいる。命の危険はもちろん、職を失うのも避けるべきだろう。そのためには、時には目を瞑らなければならない場合もある。そんな現実は、池上にも理解できた。
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