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 「最後に、これまで入ってきた情報の中で何か気になることはないか? どんな小さなことでもいい」  ううむ、と考え込む城島。  「これもここだけにしておくが、病院で暴れたのは異常者じゃない。瀬山利里亜を殺害しに来た人狼だ。俺は、はっきりと見た」  池上がそう言うと、城島は改めて息を呑んだ。  「本当に、そんな怪物が暴れまわっているのか……?」  「昨夜民事党の大川康介が殺害された件にしても、俺はある程度人狼が関わっていると思っている」  詳細はわからない。だが、大川も日の出製薬の理事だった。人狼かエリカ、どちらかの仕業だろう。  小さく唸るようにすると、城島は深刻そうな顔になる。そして口を開いた。  「本当に妙というか、些細なことでもあるんだが、沢の北峠辺りの住民に聞き込みをしていた刑事達がおかしな話をしていた」  「おかしな話?」  「ああ。あの辺りでは、昔から狼を信仰する宗教があるらしい。ちゃんと神社もあるようだ。それを知る年寄りが何人か、猟奇殺人事件は狼が天罰を下しているんだ、と言っていたそうだ」  「狼信仰……?」  息を呑む池上。  「猟奇殺人事件の被害者達だが、分署の警察官は別として、一般人は皆、ちょっとした悪い面がある」  城島が続けてそう言った。
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