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「なんだって? 殺される理由があったというのか?」
「いや、そんなに大袈裟な悪事じゃない。分署の近くで殺された3人の若者は、いわゆる『迷惑系YouTuber』だった。次の4人は車に乗っていたが、全員からアルコールが検出されている。つまり、酒気帯び運転をしていたわけだ。そして、瀬山利里亜は薬をやっていた非行少女だし、彼女に薬を与え悪さに利用していたチンピラ2人も被害者だ。そいつらに騙されていたとはいえ、彼女に淫行を働こうとしていたサラリーマンもな。そういった情報は秘匿されているはずだが、どこかから漏れて広がった可能性もある。それを聞いた人達が、狼の天罰、と言い始めたようだ」
あの人狼は、高級中華レストランでは誰も殺していない。奥山殺害の際も、秘書や運転手は死なないように銃撃していた。病院でも同様だった。
天罰……。
人狼が殺害する相手には、日の出製薬関係者も含み、それなりの意味があるのか?
何かが引っかかる。病院では、池上を見て戸惑っていたようなところもあった。
「どうした、難しそうな顔をして?」
城島がのぞき込むようにしてきた。
「いや、なんでもない」誤魔化すように顔を上げると、池上はフッと笑う。「ありがとう。いろいろためになった。じゃあ、しばらく会わないようにしよう。おまえは俺が言ったことは忘れて目の前の事件に集中してくれ」
「池上……」
何か言いたそうな城島。だが、言葉が見つからないようだ。
池上は立ち上がる。
「じゃあ……」
申し訳なさそうな、あるいは心配そうな視線を向ける城島に手を振り、池上はその場を後にした。
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