万年友

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僕の名前は繋心 充一。 ただの高校生だ。どこにでもいる高校生。 友だちも少ないけどいる。 学校の先生も優しい。 両親も頑張って働いて、毎日ご飯を食べさせてくれる。 何不自由ない筈の、日本ならどこにでもいる高校生。 だけど、いつも僕は本当の自分でいられない。 いつも友だちに合わせて、先生の言うことをただまじめに聞くだけ。 両親の期待を裏切らないよう、心が磨り減りながら送る日々。 夢もない。希望もない。自由がない。 だから、生きる理由もない。 毎日、自分が生きる理由を自問自答しながら探すだけ。 でも、いつまで経っても見つからない。 想像世界の人間みたいな力もない。 小説の世界の人たちみないな心の強さが、意志が欲しくて堪らないのに、僕にはそんなものない。 そんなことを、近くの丘にある公園の椅子に座って考えている。 そして、両親が帰るまでに家に戻るために、夕日が落ちる前に家へ帰り、「おかえり」と、何でもないように笑顔で迎えるんだ。 小説の世界だと、大抵悩みを抱えるのは不幸なことがあった人が多い。 読者もそれを望む。 不幸な人を見て、同情したり、共感したりして、悩む彼、彼女に寄り添うんだ。 現実の世界でも同じだ。 僕みたいな不自由がないと社会から、周りの人から決めつけられる人間には誰も寄り添ってくれない。 思いを伝えたところで、理解なんかしてくれない。 普通の人が悩んじゃいけないんですか。 普通の悩みで悲しんでも、誰も寄り添ってくれないのは何故ですか。 いつまで経っても、答えは返ってこない。 だから、僕は一つの答えを造ったんだ。 多分、僕が価値のない人間だからなんだ。 この日、僕は自殺した。 意思なんて、残っていなかった。
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