5人が本棚に入れています
本棚に追加
それを聞いた僕は眉をひそめた。こんなニラ漬けなんかで金を取るのか。
いや、「ニラ漬けなんか」などと言ってしまったが、確かにものすごく美味しそうではある。
しかし、こういう卓上の付け合わせはサービスなのが普通だろう。
「えっ、なに。金取るの」
「へぇ、そりゃ飲食店ですからねぇ」
それはそうだが壺ニラ食べ放題800円を、ラーメン900円に上乗せすると、2000円近い。
庶民の食べ物・ラーメンでそれは高すぎやしないか。
「あぁ、あとね、後ろにお水ありますんで。
それは飲み放題で500円、1杯なら100円ですわ」
おやじが指さすままにウォーターサーバーの方を向いた僕は、続くその言葉にさらに度肝を抜かれた。
首にかけたタオルで顎に滴る汗を拭くおやじは、なんでもないような顔をしている。
「まじかよ。お客様は神様だろ」
思わず口をついて出た僕の一言に、おやじは急に不機嫌を顕わにした。
この世界のタブーに触れてしまったかのように激昂し、そのボルテージはみるみる上がっていく。
「なに言ってんだ!
この店は俺がつくった店だ。
つまり、店主の俺がここでは神様だ」
突然爆発した目の前の人間の怒りに、僕の負けん気も遅れて火が付いた。「嫌なら出て行け」と怒鳴るおやじに、「あぁ、そうさせてもらうよ! こんな店、こっちから願い下げだ」と売り言葉に買い言葉で、僕は店を飛び出した。
ひどいラーメン屋もあったもんだ。あれじゃ固定客なんか付かないに違いない。すっかり気を悪くした僕だったが、気を取り直して次の店を探すことにする。
少し気持ちの高ぶりが冷めてきたころ、目の前に見えてきたのは寿司屋だった。
回転寿司ではないようだが、店の前に置かれた本日のお品書きを見ると、そこまで高級な価格帯でもないらしい。
最初のコメントを投稿しよう!