新たな日々

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すると…… 「悠! 悠はどうした?」 心配した国王陛下が白石さんを呼ぶ。 白石さんが、おずおずと私の部屋から出てくるのを見て、国王陛下は全てを察したようだった。 「悠、覚えておけ。  声は届かなくても思いは届く。  誰かが由良を傷つけようとすれば、俺はどこにいても、由良の思いを受け取って必ず助けに来る」 国王陛下のこんな低くて厳しい声は初めて聞いた。 「由良、俺の部屋へ来るか?」 優しい声で尋ねられ、私はこくりとうなずいた。 国王陛下は、左手で私を胸に抱き、右手で私の部屋を持ち上げると、白石さんをその場に残して歩き出した。 国王陛下は、自身の寝室のサイドテーブルに私の部屋を置き、私も下ろした。 「ここなら、一晩中でも由良の話が聞ける。  これからはずっと一緒だ」 国王陛下は、大きな手でぎこちなく私の頬の涙を拭ってくれる。 「国王陛下……」 その優しさに触れて、止まりかけた涙がまたあふれ出した。 「ジェラールでいい」 ジェラールって、国王陛下の名前? 私は、涙を拭って国王陛下を眺める。 「ジェラール?」 私がそう呼ぶと、彼は嬉しそうに微笑んだ。 「由良、なんでもいいから、話してくれないか?  由良がどんな世界でどんなふうに育ってきたのか知りたい」 私は、思いつくまま、幼い日の出来事や両親との思い出などを語り始める。 ジェラールが、私の部屋からベッドを出してくれたので、ジェラールの顔を眺めつつ、横になりながら、ポツリ、ポツリと思い出を語っているうちに、気づけば眠りに落ちていた。 きっと、それがジェラールの優しさだったんだろう。 私は、昨夜の恐怖に(さいな)まれることなく、眠ることができた。
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