5月

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5月

釣鐘草が咲き始めた。 満月の夜、私たちは揃って神殿に向かう。 神に祈りを捧げるために。 ジェラールは、小ぶりの釣鐘草を一輪、私に手渡してくれた。 私はそれを抱えて祈る。 ジェラールと結ばれたい。 けれど、そんな私の願いはもうどうでもいい。 私はどうなってもいいから、彼、ジェラールが幸せになれますように…… 彼は国王だ。 跡継ぎが必要なことは分かっている。 私は、どんなに思っても彼と結婚することはできない。 誰か、彼が愛せる人と幸せな結婚をしてくれたら…… そして、彼もまた祈った。 彼女とずっと一緒にいたい。 けれど、そんな俺の願いはもうどうでもいい。 俺はどうなってもいいから、彼女、由良(ゆら)が幸せになれますように…… 故郷に帰って、彼女の優しい両親と再会できますように…… 私たちが目を開けると、釣鐘草の中には、ひとしずくの水滴が溜まっていた。 思わず、目を合わせ、迷う。 本当に願いが叶うとしたら、私はジェラールを失うことになる。 それでもいい? 自問自答した結果、半信半疑のまま、私たちはそれを飲み干した。 互いの幸せを祈って……
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