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「周防優希乃様へ――」
その手紙を見た時、私は全ての始まりの日のことを思い出した。
寒い寒い空の下、漏れ出る白い吐息。口いっぱいに広がったコーヒーの苦み。そして、もう会うことの出来ない、――あの笑顔。
私が当時抱いた感情が、まるで雪崩のように力強く押し寄せて来る。その感情に居場所を追いやられてしまうように、現在と過去の境目が曖昧模糊となり、今の私がどこにいるのかが不明瞭になっていく。
あの時の私は必死にあがいてあがいて、息をしようとしていた。だけど、独りでもがけばもがくほど、息苦しさが募っていくだけだった。
いつも私という存在を覆すような転機には、雨やら雪やらと何かが頭の上から降り注がれている。その一つ一つが心に募っていき、歩き方を忘れてしまったかのように、私は動くことさえままならなくなる。
今だって、空を見れば――。
ずっと私は進む術を知らなかった。逃れることさえ赦されず、雪崩に埋もれ、私の身も心もそのまま凍っていく他なかった。更に追い打ちを掛けるように、とある言葉が私の頭の中に響き渡る。いつまでも私の傍をついて離れない、あの言葉。
私は全てを振り払うように、頭を横に振る。違う。そういった感情は、もう全部断ち切ったものだ。今の私には、もう関係がない。
私は手紙の中身に一通り目を通すと、顔を上げて――。
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