12月17日(日)

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 ***  そして、勉強が捗り気付けば三時間ほどの熱中した時間が過ぎた頃、誰とも合図なく、自然とシャーペンをテーブルに放るように転がすと、 「ふー、さすがに疲れたぁ」 「こんなに真面目に頭使うなんて、授業でもそうそうねーよ」 「あはは、言えてる」  各々口を開いて雑談を交わし始めた。  私は会話に加わらないように、静かにお茶を飲む。最初は温かかったお茶も、もう冷めてしまっていた。  私が口から空になったカップを離した途端、 「んじゃ、俺ドリンクバー行ってくるわ」 「あ、私も行く! みんな分も一緒にもってくるよ」  クラスメイトの沖と田島を皮切りにして、それぞれ欲しい飲み物を言っていく。 「周防さんは、お茶で大丈夫?」 「あ、うん」  無邪気な笑みで訊ねられた私は咄嗟に頷くと、田島と沖は席を立ってドリンクバーへと向かった。 「これからどうする? もう夕方になっちゃったけど」  力なく机に突っ伏して言ったのは、三宅だった。三宅の言葉に視線を窓に移す。外は薄暗い黒の中に微かな橙色が滲んでいる。十二月は日が暮れるのが早い。 「もうひと頑張りするっしょ――って言いたいけど、私もう無理ぃ、疲れたぁ」  椎谷がソファの背もたれに全身を預けて、大きく腕を伸ばしている。椎谷の表情は、疲労の色が垣間見えるがそれと同時に達成感のようなものも見て取れた。その表情から上手く黒澤に教えることが出来たのだろうと、勝手に推測する。
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