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「――優希乃っちはどうする?」
「カラオケ代くらいなら、勉強のお礼でスノーさんに奢るけど?」
話題の矛先が私へと向き、一瞬体が強張った。クラスメイト達の視線が、私に集まっている。多分、普通の人なら喜んでついていくのだろう。でも、
「……いい。私、この後は一人でゆっくり勉強するから」
首を横に振った。私の言葉により、空気が固まるのが感じた。私の発言が空気を読まずに水を差すようなものだと分かっていた。けれど、これ以上一緒の空間にいることは――特に、一緒にカラオケに行くことは、私にはハードルが高すぎた。
「……そっか。なら仕方ないね! これ以上優希乃っちの勉強時間を奪う訳にいかないし」
椎谷は深く問いただすことなく頷いた。
しかし、椎谷は納得してくれたものの、ほかのクラスメイト達はまだ不服そうな表情を浮かべている。皆でカラオケに行って勉強をするという流れになっていたのだから当然だろう。けれど、あえてそのことを口にしようとする人はいない。
誰が話の切り出しを持ち上げるか様子を探り合う中、
「あ、ごめん。僕も今日はここで帰らせてもらうよ。叔父さんからご飯食べようって連絡が来ちゃった」
追い打ちを掛けるように、笛吹が挙手して言った。
笛吹の言葉に、クラスメイト達は驚きの声を上げる。私の時とは違って、空気が乱れるような感覚はない。
「えー、サネ君も来れないの?」
「マジかよ」
「サネが行かないなら、俺も帰る」
ナベちんが言うことで、更に「えー」という驚きの声が漏れる。いつの間にか、皆の関心は私から削がれていて、笛吹とナベちんに注がれていた。
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