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肩に掛けていたレザーバッグが小刻みに振動し始めた時、あ、嫌な予感がすると思った。
バッグからスマホを取り出して画面を確認すると、LINEの通知が来ていた。発信者は一ヶ月前に付き合い始めた恋人。メッセージ内容はこうだった。
『泉。俺たち、もう別れようか』
――またか。
小さく溜息を吐きながら『分かった。今までありがとう』と打ち込み、スマホをバッグへと放り込む。夜更けの会社帰り。歩道橋の中程まで歩みを進めていた私は、一度足を止めて星空を仰いだ。
今年に入ってこれで3回目の失恋。かつ最短記録更新。
「はぁ……」
お腹の底から凝った息を吐きだしたあと、視線を夜空からネオン溢れるビル街へと戻し、幾分か重い足取りで歩き始めた。
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