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 あるところに、よくばりな女の人がいました。  周りの人が持っているものを見るとなんでもほしがって、よこせよこせと追いかけ回し、断られると悔しそうに「ずるい、ずるい」と言いました。  力づくで奪い取り、自分のものにして喜ぶこともありました。  嘘もついて、決して、謝ったり、返してあげたりもしませんでした。  やがて、おばあさんになった女の人は、ひとりぼっちになりました。  楽しそうにしている人を見て、小さい声で「ずるい、ずるい」と言っていました。  おばあさんは「ずるいずるい、ずるいずるい」と最後まで言い続けて、誰にお別れを言われることもなく、亡くなってしまいました。  この話を読んだひとは、三日後に、おばあさんがやってきます。  おばあさんは「ずるヰさん」という、お化けになってしまいました。  ごめんなさいと謝れば、いろんなものを奪っていきます。  うるさいと追い払えば、噛みつかれます。  傷は腐って、いつまでも治りません。  黙っていると、地獄へ連れて行かれてしまいます。  助かる方法はひとつしかありません。  お前がずるい、と三回唱えます。  そうすると、ずるヰさんは消えてしまうそうです。  ずるい、ずるいと言って消えてしまうらしいです。
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