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 5月も後半になると緑が豊かになってくる。  「風薫る」の言葉通り若葉の香りまでしてくるすがすがしい天気。  お茶屋『一茶(いっさ)』の新茶もそろそろ終わりになってきた。  今日も朝から『一茶』からは2人の声が聞こえてくる。 「お母さん、最後の新茶ここに置いておくね」 「ありがとう、葉月(はづき)。でも学校の用意はできてるの?」 「大丈夫だよ。ちゃんと準備できてる。お母さんこそ大丈夫?」 「私は平気よ。だって今日非番だもの」 「あっそっか」  葉月と「お母さん」は顔を見合って笑いあった。 「じゃあ今日は私に任せておきなさい」  「お母さん」は手を胸に置いて葉月に言った。 「うん。じゃあ、私は学校に行ってきます」  葉月は後ろに置いていた鞄を持った。 「気をつけてね」 「うん。行ってきます」  葉月と「お母さん」はてを振り合った。  そのまま葉月は店から出た。  
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