袖引き煙草に押し付け茶

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「ここ1週間くらい秋人(あきと)が口をきいてくれないの」  秋人は紅葉の彼氏だ。 「秋人がこの前まで浮気しててね」  これは葉月も知っていた。  しかしその後、和解して仲は戻っていたはずだ。 「和解したところまではよかったんだけど、やっぱり私心配になって秋人によく連絡を取るようにしたの」  葉月は黙って聞いていた。 「だってそうじゃない! 浮気されて心配するのは当然でしょ! だから秋人に何をしてるかとか、誰といるのかちょくちょく聞いてたの」  紅葉の目には涙が浮かんでいた。 「そしたら急にウザいとか、連絡してくるなとか言ってきたの。あげく別れ話も浮かんでくるようになって。でも私は秋人が好きなの。だから別れたくないって話そうとしたら避けられちゃって。どうしたらいいのか」  紅葉は下を向いた。 「連絡だって、秋人が好きだから、大切だからしてたのに・・・・・・なのに・・・・・・なのに・・・・・・」  その目からは涙があふれていた。  机にはしずくが積み重なっていく。 「ちょっと席外すね」  葉月はそう言うと席を立った。  (ああ、葉月にも避けられちゃった)  紅葉は1人になった席で思っていた。  (私は1人か・・・・・・どうしてなんだろうね・・・・・・大切なものがどんどんなくなっていく・・・・・・もう、やだ)  紅葉はどんどん暗い世界に引きずり込まれていた。 「紅葉ちゃん、お待たせ」  そこに使の声がした。
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