神々の憂鬱

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 高天原(たかあまはら)にて、日本各地、八百万(やおよろず)の神々が一堂に会して、とある議論が展開された。議題は、近年における人間たちの神への非信仰ぶりについてである。  議長を務める知恵の神が口火を切った。 「皆の者、聞いてくれ。近頃の人間たちは我々神々が日本列島や人間たちを創り出し、文化を与えてやった恩を忘れ、欲望のままに自然を破壊し、自分たちの生活を良くすることしか考えなくなってしまった。そればかりか、何か嫌なことがあれば『ああ、神はいないのか』などと世迷言を言って、すぐに責任を神になすりつけようとさえする。このままでは神としての威厳を保つことができない。何か人間たちに、神のありがたみを思い出させるような良案はないのだろうか」  返す刀で疫病の神が口を開いた。 「俺が地上に病を振りまいて、人間どもを半分くらい消してしまおう」  よしそれなら、と雷の神が続いた。 「我が一暴れしてやってもいいぞ。天から降り注ぐ雷ならば、人間どもも神を怒らせたのかも知れないと許しを乞うことだろう」  知恵の神はたしなめるように首を横に振った。 「そのようなことをして人口を減らしてしまっては、我々を崇め奉る絶対数が減ってしまう。それではまるで意味がないではないか」
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