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1章 みんな集まれ~♪
『フォレストヴィラ・ゆざわ』
銀色の毛並みが艶やかなチンチラさんが見上げる木製の看板には、丸っこい字が書かれていました。
辺りは一面の銀世界です。看板の先に、綿帽子を被ったたくさんの木々に囲まれて建っているのは8階建ての大きな建物。ちょっぴり年代を感じさせるコンクリート造りのマンションですが、その背後にスキー場のリフトが小さく見えていることから、ここがリゾートマンションであることを感じさせてくれます。
「わー、ホントに来てしまったでし!」
看板の前で感無量に佇むチンチラさんに抱き着いてきたどうぶつさんがいました。
「おハナ!! 会いたかったでぇ」
それは目元に薄茶色のブチ模様が入った白いウサギさん。
おハナと呼ばれたチンチラさんと白いウサギさんは、そのまま勢い余って雪の上へどさりと倒れ込みました。
「珠姐ぇでし!」
「ふふん、一目でおハナって分かったわ。尻尾が超ラブリーやもんな」
二人……いや、二匹は真綿のような新雪の上を転がり、出会えたことを喜び合いました。
「珠姐ぇの格好もカワイイでしね」
「せやろぉ。うっくんバージョンやねん」
起き上がった珠姐ぇは、雪の上でくるっと回ってみせました。
最後にはポーズを決めてドヤ顔。丸っこいフォルムが可愛らしいウサギさんの姿に、おハナの顔もほころびます。
「こんなイベントに呼んでもらえて、珠姐ぇにも会えて、ハナはとっても嬉しいでし」
「EvRYはんもおもろいこと考えはるもんやなぁ」
二人はインターネット小説投稿サイト、エブリスタの会員。
いつもは書き上げた作品や写真をネット上へ投稿している二匹ですが、今日はエブリスタの運営会社EvRY主催のイベントに招かれてこの『フォレストヴィラ・ゆざわ』へやってきたのでした。
これ以上積もることのない粉雪が降りしきる中、二匹は物珍し気に辺りを見回しつつリゾートマンションへ向かって歩きます。
「そっか、雪の上やから、うちらの足跡がつくんやなぁ」
「かわいい足跡でし」
じゃれ合いながら歩いている二匹を、マンションの入り口に立っていたピンク色のアマビエさんが手を振って出迎えてくれました。
「はいはーい、ご到着のみなさんは、こちらへどうぞビエ」
「その姿はいっちぃでしね?!」
「そうだビエ!」
いっちぃもエブリスタにたくさんの作品を投稿している会員さんです。
いっちぃのアイコンがアマビエだったことからすぐにピンときたおハナは、短い足でとてとてと駆け寄ると彼女の手を握りました。
「わぁ、いっちぃにも会えたでし。今日のいっちぃはスタッフとして参加でし?」
「コロナ禍の中でみんなが集まるから、是非ともアマビエの力が必要って呼ばれたビエ」
「そうなんや。スタッフ参加の人もいるんやね」
みんな、普段からエブリスタの中で仲良くしている間柄なので、こうやって顔を合わせるのは初めてなのに初めてな気がしません。
アマビエのいっちぃは「他のスタッフ参加者も中で今、おもてなしをしてるビエ」と教えてくれました。
「そっかぁ。他にもいろんな人……ちゃうかった、どうぶつさんに会えるんやろな」
「どんなイベントになるか楽しみでし」
二匹は期待と興奮で胸を高鳴らせながら『フォレストヴィラ・ゆざわ』の中へ、そのちっちゃな足を踏み入れたのでした。
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